不安定な回線のための SRT配信
SRTは、不安定な回線に強いライブ映像の送り方です。映像の一部が欠けたときは、自分で決めた短い遅延の範囲内で、SRTがその部分の再送を求めます。このページでは、SRTのしくみをやさしく説明します。OBSやvMixなど各エンコーダの設定値と、1本のSRT配信がStreamRove経由でYouTube、Twitch、Facebook、Kickに届く流れも紹介します。
SRT(Secure Reliable Transport)は、Haivision社が開発してオープンソースとして公開した方式です。OBS、vMix、FFmpegのいずれからも送信できます。
配信者がSRTに切り替える理由
不安定な回線に強い
SRTはUDPで通信し、欠けた部分の再送だけを、設定した遅延の範囲内で求めます。RTMPはTCPで通信するため、失われた部分を順番にすべて待つことになります。パケットロスの多い回線では、映像が止まり、やがて接続が切れます。
どれだけ遅延を許すか、自分で決められる
SRTには短いバッファがあり、その長さを遅延(latency)と呼びます。失われたデータの回復に、このバッファを使います。StreamRoveでは、最初は500 msをおすすめしています。OBSの公式ガイドは、サーバーまでの往復時間の2.5倍以上を求めています。経路が長い場合やモバイル回線では、もっと大きな値が必要です。
プラットフォームには、対応しているアドレスで届く
YouTubeのエンコーダ設定に表示されるのはRTMPとRTMPS(ほかにHLS)で、FacebookとKickが発行するのはRTMPSのアドレスです。SRTで送る先はStreamRoveです。各プラットフォームには、それぞれが発行したアドレスで配信が届きます。
会場から出る配信は1本だけ
アップロードで送るのはSRTの1本だけで、各プラットフォーム向けのコピーはStreamRove側で作ります。6,000 kbpsで3つのプラットフォームに送る場合、必要なアップロード速度は約26 Mbpsではなく、約8.8 Mbpsです。
StreamRoveのSRT配信
エンコーダ配信ごとにSRTアドレスを用意
「SRT」タブには、そのまま使えるURLが1つと、同じアドレスを分けた項目が並びます。設定を示す1行も表示され、内容はポート8890、モードCaller、遅延500 ms、パスフレーズなしです。
SRTで受けて、各プラットフォームの形式で送り出す
StreamRove中継サーバーが配信を各配信先へ渡します。YouTube、Twitch、Kick、Facebook、カスタムRTMPの配信先には、それぞれが受け付ける方式で届きます。
手持ちのエンコーダで使える
OBS 25以降、vMix、Larix Broadcaster、FFmpeg、SRTのCallerモードを備えたハードウェアエンコーダに対応しています。中継サーバーが受け付けるのは、H.264の映像とAACの音声です。ほかの形式が届いたときは、その形式名を表示します。
回線の状態がわかるステータス表示
「SRT」タブには、「エンコーダがSRTで接続済み。中継サーバーが配信中です。」や「エンコーダから15秒間データが届いていません。」など、中継サーバーが受け取っている状況が表示されます。「配信エンジニア」パネルは、ビットレート、フレームレート、キーフレームを見守ります。
回線が途切れても、待機画面でつなぐ
Controlプラン以上では、エンコーダが再接続するまで、「バックアップ配信」カードが待機画面を流して配信先への配信を維持します。途切れた時間をつなぐ機能で、2本目の映像を送るものではありません。
SRTでの送り出しにも対応
「カスタムSRT」の配信先は、SRTを待ち受ける受信機に配信を送ります。ブロードキャスト方式(ベータ版、Relayプラン以上)では、中継サーバーがエンコーダの映像に手を加えず、1080i50も含めてそのまま届けます。
SRTとRTMPの違い:StreamRove経由か、会場から各プラットフォームへ直接か
どちらの方法でも番組は配信できます。違いが出るのは、不安定な回線、共有の回線、遠い経路を使うときです。
| StreamRove | 各プラットフォームへRTMPで送信 | |
|---|---|---|
| 不安定な回線で失われたデータ | ✓ 設定した遅延の範囲内で再送を要求 | 欠けた分を順番に待つため、映像が止まり、再接続になる |
| 追加される遅延 | SRTの遅延(最初は500 ms) | 設定項目はなく、回線が不安定になると増える |
| 3つのプラットフォームに6,000 kbpsで送るときのアップロード速度 | ✓ 約8.8 Mbps:配信は1本だけ | 約26 Mbps:配信は3本 |
| 送信中の暗号化 | — なし:StreamRoveのSRTアドレスにはパスフレーズがない | ✓ RTMPSなら暗号化される(ポート443のTLS) |
| Webの通信しか許可しないネットワーク | — ブロックされる場合あり:SRTはUDPのポート8890を使う | ✓ RTMPSは、安全なWebサイトと同じポート443を使う |
| エンコーダからの映像が途切れたら | 待機画面(Control以上)、配信切れ通知(すべてのプラン) | すべてのプラットフォームがオフラインになる |
| 放送局のSRT受信機への配信 | ✓ カスタムSRTの配信先 | — RTMPでは不可 |
SRTでStreamRoveに送り、すべてのプラットフォームへ配信する方法
前日のうちに、本番で使う回線で設定しておくと安心です。
- 1
エンコーダ配信を作成する
StreamRoveで「新しい配信」を押し、「エンコーダ | RTMP」を選びます。配信ページは「RTMPS」タブが開いた状態で表示されるので、その隣の「SRT」タブを選びます。
- 2
配信先を追加する
「連携済みのチャンネル」で、YouTube、Twitch、Kickはワンクリックで連携し、Facebook、カスタムRTMP、カスタムSRTは貼り付けたアドレスで追加します。最初のテストでは、どれもオフのままにしておきます。
- 3
エンコーダに合うSRTアドレスをコピーする
「URLひとつで入力」は、必要な情報を1行にまとめた形式で、OBSをはじめほとんどのソフトで使えます。「項目ごとに入力」では、「サーバー」「ストリームID」と設定の1行が表示されます。入力欄が別々に分かれているエンコーダ向けです。
- 4
OBS:URLを「サーバー」に貼り付ける
「設定」→「配信」を開き、「サービス」で「カスタム...」を選びます。SRTのURLを「サーバー」に貼り付け、「ストリームキー」は空のままにします。500 msにするには、URLの末尾に&latency=500000を追加します。OBSはSRTの遅延をマイクロ秒で読み取ります。
- 5
vMix、アプリ、ハードウェア:項目を入力する
モードまたはタイプを「Caller」にし、ホストにlive.streamrove.com、ポートに8890、遅延に500(ミリ秒)を入力します。ストリームIDは途中で切らずに全体を貼り付け、パスフレーズは空のままにします。vMixの画面は、vMixガイドで紹介しています。
- 6
H.264の映像とAACの音声で送る
映像はH.264で、最大6,000 kbpsのCBR(固定ビットレート)にします。キーフレームは2秒ごと、音声は128 kbpsのAACです。これ以外の形式は中継サーバーが受け付けず、エンコーダが送った形式を表示します。
- 7
エンコーダを開始し、ステータス表示を確認して、ライブ配信を始める
エンコーダで配信を開始します。「SRT」タブに「エンコーダがSRTで接続済み。中継サーバーが配信中です。」と出て、プレビューが表示されます。配信先をオンにして、それぞれ「届いています」と表示されているか確認します。
SRTの設定値を項目ごとに解説
値は、配信ページの「SRT」タブからコピーしてください。ここでは、各項目の意味と、エンコーダでの呼び名を説明します。
| 項目 | 入力する値 | 理由 |
|---|---|---|
| モード/タイプ | Caller | エンコーダからStreamRoveに接続しに行き、StreamRove側が待ち受けます。OBSはデフォルトでCallerを使います。vMixでは設定名が「Type」です。 |
| ホスト/サーバー | live.streamrove.com(サーバー欄がひとつだけの場合はsrt://live.streamrove.com:8890) | StreamRove中継サーバーです。「SRT」タブからコピーします。 |
| ポート | 8890 | SRTはUDPで通信します。配信するネットワークで、このポートへの外向きUDP通信を許可しておく必要があります。 |
| ストリームID | 「項目ごとに入力」にある値(publish:live/で始まります) | どの配信かを識別する値で、パスワードと同じように扱います。「中継キーを再発行」を押すと、新しいIDが発行されます。 |
| 遅延(Latency) | 500 ms(OBSのURLでは&latency=500000) | OBSとFFmpegはSRTの遅延をマイクロ秒で、vMixと多くのハードウェアはミリ秒で数えます。 |
| パスフレーズ | 空のまま | StreamRoveのSRTアドレスはパスフレーズを使いません。StreamRoveに届くまでの間、映像は暗号化されません。 |
| 映像 | H.264、CBR、キーフレーム2秒ごと、最大6,000 kbps | 「SRT」タブが求める設定です。中継サーバーはH.265とAV1を受け付けません。 |
| 音声 | AAC、ステレオ、128 kbps、48 kHz | StreamRoveのおすすめです。中継サーバーはOpusなど、ほかの音声コーデックを受け付けません。 |
配信に使うパソコンのアップロード速度は、ビットレート計算ツールで測ってください。「SRT」タブの数値は、回線がその量を送れることが前提です。
不安定な回線でSRTを使うコツ
遅延は、習慣ではなく経路に合わせて決める
OBSのガイドは、エンコーダとサーバーの間の往復時間の2.5倍以上の遅延を求めています。StreamRoveの500 msは、安定した有線回線に向いた値です。モバイルデータ、ホテルのWi-Fi、大陸をまたぐ経路では、少しずつ上げて、そのたびにテストし直してください。足した遅延は、各プラットフォーム自身の遅延に上乗せされ、そのぶん視聴者の待ち時間が延びます。映像が安定したら、それ以上は上げません。
再送の分の余裕を残す
SRTは失われたデータをもう一度送って回復しますが、その再送も、配信そのものと同じアップロード回線を使います。回線がいっぱいだと、再送する余地がありません。ビットレートは、回線が運べる量よりかなり低く抑えてください。StreamRoveのビットレート計算ツールは、測定したアップロード速度の70%以下に収まる配信を提案します。「SRT」タブが示すのは、最大6 Mbpsです。
その日いちばん悪い回線でテストする
本番中に使う回線でテストしてください。対象は、会場のWi-Fi、スマホのテザリング、共有のオフィスネットワークです。配信先はすべてオフのまま、周りの人がネットワークを使っている状態で、「SRT」タブのステータス表示を数分間見てください。StreamRoveが2026年9月16日に実施したテストでは、RTMPで映像がカクついた回線でも、中継サーバーへのSRTは30 fpsで6 Mbpsを保ち、ドロップしたフレームはありませんでした。
SRTがまったく接続できないとき
配信がいつまでも表示されないときは、外向きのUDP通信がブロックされているか、コピー中にストリームIDが途中で切れていることがほとんどです。publish:live/から始まる全体を、もう一度貼り付けてください。Webの通信しか許可しないネットワークでは、ポート443の「RTMPS」タブを使います。ストリームIDが漏れたときは、「中継キーを再発行」を押すと新しいIDが発行され、古いIDで接続していたエンコーダは切断されます。
よくある質問
SRT配信とは?
SRT(Secure Reliable Transport)は、Haivision社が開発した、インターネットでライブ映像を送るためのオープンソースのプロトコルです。UDPで通信し、欠けたデータの再送を求め、自分で決めた一定の遅延(latency)を保ちます。このため、Wi-Fi、モバイルデータ、距離の長い経路では、RTMPより安定します。
SRTはRTMPより優れていますか?
不安定な回線で建物の外へ配信を送り出すなら、たいていは「はい」です。SRTは映像を止めずに、失われたデータを回復します。状態のよい有線回線なら、RTMPSでも同じようにうまく配信でき、遅延の設定も要りません。RTMPについては、RTMPガイドで説明しています。
SRTの遅延はいくつに設定すればよいですか?
まずは、StreamRoveがおすすめする500 msから始めます。OBSのガイドは、エンコーダとサーバーの間の往復時間の2.5倍以上を求めています。経路が長い場合やモバイル回線ではもっと大きな値が必要なので、少しずつ上げてテストしてください。単位の違いにも注意が必要です。vMixと多くのハードウェアはミリ秒、OBSとFFmpegはマイクロ秒を使います。OBSのURLでは、500 msはlatency=500000になります。
OBSからSRTで配信するには?
「設定」→「配信」で、「サービス」を「カスタム...」にします。配信ページの「SRT」タブにあるSRTのURLを丸ごと「サーバー」に貼り付け、「ストリームキー」は空のままにします。URLにはストリームIDがすでに含まれています。500 msにするには、末尾に&latency=500000を追加します。必要なのはOBS 25以降です。ほかの手順は、OBSガイドで説明しています。
YouTube・Facebook・KickにSRTで直接送れますか?
いいえ。各プラットフォームが通常用意しているアドレスでは、SRTで直接送れません。YouTubeのエンコーダ設定に表示されるのはRTMPとRTMPS(ほかにHLS)で、FacebookとKickが発行するのはRTMPSのアドレスです。SRTはStreamRoveに送ってください。各プラットフォームには、それぞれが発行したアドレスで配信が届きます。
StreamRoveに送るSRTは暗号化されますか?
いいえ。SRTはパスフレーズで暗号化できますが、StreamRoveのSRTアドレスはパスフレーズを使いません。通常のRTMPと同様に、暗号化されずに送られます。ストリームIDは、パスワードと同じように扱ってください。経路で暗号化が必要なときは、「RTMPS」タブを使います。ポート443のTLSで配信を保護します。
SRTで配信できるエンコーダはどれですか?
OBS Studio 25以降、vMix(出力として)、iOSとAndroidのLarix Broadcaster、FFmpeg、多くのハードウェアエンコーダが対応しています。ハードウェアは、マニュアルでSRTのCallerモードがあるか確認してください。vMixの手順は、vMixガイドにあります。
StreamRoveがSRT配信を受け付けないのはなぜですか?
理由は「SRT」タブに表示されます。「このストリームキーは認識されません」と出たら、ストリームIDが間違っているか、再発行されています。もう一度コピーしてください。コーデックのメッセージには、エンコーダが送った形式が表示されます。たとえばH.265の映像やOpusの音声です。H.264とAACに切り替えて、同じアドレスでもう一度始めます。
StreamRoveから放送局や自分のサーバーへSRTで送れますか?
はい。受信側のsrt://アドレスで「カスタムSRT」の配信先を追加します。StreamRoveが受信側に接続しに行くので、受信側をListenerとして先に起動しておいてください。ブロードキャスト方式(ベータ版、Relayプラン以上)なら、中継サーバーがエンコーダの映像に手を加えずに届けるため、スタンダード方式では25pに変わる1080i50も、そのまま維持されます。